疑似親子
「とても似合っているわよ、伊丹。」 よく晴れたある日。 眩い日の光のような笑顔を向けるふゆはとは対照的に、伊丹の表情はどんよりと曇っていた。 「…あのですね、ふゆはさん…。確かに術が上達したお祝いという意味でお願いを一つ聞いてあげますとは言いましたが…、」...
幻洛とふゆは
酉の初刻。 村の巡回を無事終えた幻洛は、万華鏡神社の屋敷に向かうため帰路についていた。 「…ん?」 日暮れを迎えつつも賑わいは変わらない村の商店街の一角にて、見慣れた藤色頭の妖狐が幻洛の目に写った。 何か買いたい物でもあるのだろうか、しかし一向に買う素振りは無く、ただひたす...
酔った伊丹がお誘いする話(R18)
今、目の前で起こっていることをありのままに話そう。 亥の刻。 伊丹の部屋から見える夜空は、曇りなく無数の星々が輝いていた。 そして俺の腰の上に跨り、伊丹は上機嫌な顔で俺を見下ろしていた。 それだけであれば良かった。 むしろ普段の俺であれば興奮のあまり大歓喜していたであろう。...
【外伝】幻洛と伊丹が出会うまで(前編)
「あの鍛冶屋の店主、覚(サトリ)なんだとよ。」 「へえ、そりゃあまた…、」 とある日の昼下がり。 過疎化が進み荒れ果てたその村では、いつものように下衆な話に嘲笑う者たちの姿があった。 村の片隅に建てられた小さな鍛冶屋。 それは今にも潰れそうなほどボロボロの外観で、店の前には...
【外伝】幻洛と伊丹が出会うまで(中編)
翌日。 万華鏡村の空には、眩い太陽が天高く昇っていた。 「…ん。」 窓から差し込む日の光に、幻洛は重い瞼をゆっくりと開けた。 今日は随分と暖かい、と思うもそのはず、これまでの野宿ではなく、柔らかな毛布に、綿のしっかり詰まった分厚い掛け布団に包まっていた。...
【外伝】幻洛と伊丹が出会うまで(後編)
爽やかな朝の日差しが客間に入り込み、幻洛は目を覚ました。 窓から見える美しい景色には、黄金に輝く太陽がゆっくりと山から登るのが見えていた。 朝の日差しとは、これほどまでに美しいものだったのか。 かつての村では気に留めることすらなかったことに、幻洛は静かに驚いた。...