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其ノ拾玖、蕩(R18)

「ん…、は、んぅ…」

「…は、伊丹…」

月の光が優しく注ぎ込まれる薄暗い寝室。

情事の空気が揺らめくその空間は徐々に熱く甘い熱を帯びていき、二人の思考を支配していった。


「あっ、ん…幻洛、さん…」

伊丹は幻洛の腰の上に跨がり、太腿に感じる布越しの熱い塊を追い求めるように腰を揺らしていた。

「ッ…、」

頬を赤く染めながら自らの上に跨る伊丹を見上げ、幻洛は腰から湧き上がる雄の欲を感じていた。

幻洛は伊丹の背に添えた手にグッと力を込め、衝動的にその胸元へ顔を埋めた。

「あ、っ…!」

思わず伊丹は身を動かしたが、背に回された逞しい腕に捕まり、されるがままとなってしまった。


控えめな肉質だが柔らかく温かい伊丹の胸。

スン、と空気を吸うと嗅覚を刺激する伊丹の匂い。


身体全体で伊丹を感じ、雄の欲望をそそられた幻洛はたまらなく興奮した。

「…ああ、伊丹、可愛いな…。それにとても良い匂いだ…。」

「ん、もう…何を言っているんですか…」

身体は少々訳ありだが、男に対して何を言っているのやら。

伊丹は胸元に顔を埋めている幻洛を不服そうに見つめた。


「…可愛いものは可愛い、…それだけだ。」

その表情もたまらない、といった様子で、幻洛は伊丹を見上げながらニヤリと口角を上げた。


幻洛は伊丹の纏っている浴衣をスルリと脱がせていく。

そこには桃色に色付いた胸先と包帯越しの胸先が、ピンと存在を主張していた。

伊丹は熱い息を漏らし、熱の籠もった瞳で幻洛を見つめた。

「っ、は、幻洛さん…」

「ふ…、ここ、だろ?」

そう言うと、幻洛は桃色の胸先を指の間でくにくにと挟み込む。

「や、ぁんっ…」

優しく挟まれ、軽く引っ張られるその刺激に、伊丹は背中から痺れる感覚に陥り、甘い声を上げながらビクビクと身体を震わせた。

幻洛はそのまま、包帯越しに主張する胸先にがぶりと噛みついた。

「ゃっ…!」

大きな赤子のように唇で食みながらじゅっと吸われ、伊丹は思わず甲高い声を漏らした。

「あ、んっ…、やぁ…っ!」

包帯で擦れる感覚と、熱い舌全体で胸先を舐め上げられチュクチュクと吸われる感覚に、伊丹は目に涙を溜めながら快感のあまり背を仰け反らせた。


「ふゃ、あ、ぅ…幻洛、さん…っ」

「…は、」

自らの与える刺激に対して純情に反応し、そのまま快感で溺れていく伊丹。

その姿に、幻洛もまた夢中で伊丹の胸を弄んだ。


幻洛は自らの雄がドクドクと脈打ち、グッと張り詰める感覚を感じた。


「んやぁ…っ、げんらくさん、…あ、んっ…!そこ、ばっかり…、」

伊丹は羞恥に胸先を弄ぶ幻洛の頭にそっと手を添えながら訴えた。

跨ったままの腰を遠慮がちに揺らし誘ってくる伊丹に、幻洛の下腹部はカッと熱が集まった。

「…フ、ッ…」

幻洛はギラリと金眼を光らせ伊丹を見上げ、高まる全身の熱に肩で呼吸をし、獣のように息を漏らした。


幻洛は伊丹の腰に手を添え、しっかりと固定するとグイッと身体を引き寄せた。

そのまま布も解かず、幻洛は腰をグンッと突き上げた。

「あっ…!ん、ゃ…っ!」

突然の重い突き上げに、伊丹は身体を強張らせた。

幻洛は構わず、腰の上に跨る伊丹を立て続けにズンズンと突き上げた。

「あ、あっ、ん…っ、げんらく、さんっ…!」

まだ繋がっていないのに、繋がっているように突き上げられる擬似的な感覚。

伊丹はもどかしそうに腰を密着させながら、与えられる快感に溺れていた。

「は…ッ」

このまま出してしまいたい衝動に駆られながら、幻洛も本能のまま腰を突き上げ続けた。


「ん、っ…!は、幻洛さん…っ!も、このままじゃ、なくて、…」

「…ん?」

伊丹はもぞもぞと身体をくねらせ、熱に浮かされた顔で訴えるように幻洛を見つめた。


「どうしてほしいんだ…?」

幻洛は突き上げを続けながら、全てを見透かすようにニヤリと笑みを浮かべながら伊丹を見上げた。

蕩けた表情で見つめてくる伊丹に対して、幻洛は真っ黒い雄の感情が頭の中で渦巻いていた。


伊丹の欲求はわかっている。

が、素直にくれてやる気はない。

もっと、俺を強請ってみろ。

もっと、俺で壊れてみろ。


幻洛は伊丹の理性を削ぐように、一層強く力を込めてグンッと突き上げた。

「ひぁっ!んうぅ…、いじわる…」

「ふ、…言わないとわからないだろ?」

なんでこういうときだけ心を読み取ってくれないのか。

伊丹は恨めしそうに幻洛を睨むも、その雄の魅力に呆気なく理性は崩れ、純情に本能へと塗り替えられていった。


「…は、んっ…。幻洛さんの…コレ…、ちゃんと欲しい、です…」

伊丹は腰をずらすと、股の間で布越しに脈打つ雄を掌でスリスリと撫で上げた。


今日の凛々しさが嘘だったかのように、伊丹は蕩けた顔で恥ずかしそうに強請った。


布越しに弱く擦られる感覚に、幻洛は熱く息を吐いた。

「は、…伊丹も欲しがりだな…」

「…む、幻洛さんだって…、こんなに、おっきくしてるくせに…、」

伊丹は布越しにそそり勃つ熱い塊の先端を指先でツンと弾いた。

不覚だったその感覚に、幻洛は腰を小さく振るわせ、堪えるように息を呑んだ。


仕返しだ、と言わんばかりに幻洛は伊丹の尻尾をムニュッと掴んだ。

「んやあっ…!」

突然尻尾を掴まれた伊丹は、甲高く鳴きながらたまらなく幻洛にしがみついた。

「ふぁ、ん…っ!げ、幻洛、さん…!尻尾は、だめ、ぇ…っ」

「ハッ…、駄目と言う割には、腰が揺れているな…」

幻洛はモノを扱くような手付きで伊丹の尻尾を摩り続けた。

伊丹の雄の反応は薄いが、彼の尻尾がこれほどまで感度を拾うとは幻洛も思っていなかった。


伊丹は尻尾を弄ばれ、背中から腰に走るゾクゾクとした快感に震えながら素直に喘いだ。

「ん、もう…!からかわないで、…んやぁ…っ!」

指先でグリグリと捏ねられ、伊丹は腰をビクンッと強く跳ね上げた。


「…先がイイのか?」

徐に、幻洛は尻尾の先に手を添え、先端の肉をくにくにと指の間で挟み込む。

「や、ぁっ…!んんっ…!」

先程弄ばれた胸先と同じような快感を拾い、伊丹は背を仰け反らせた。


「それとも、付け根か?」

幻洛は尻尾の付け根に手を移すと、尾骨ごと刺激を与えるようにグニグニと指先で揉み込み、ときよりトントンと軽く刺激をした。

「んやっ!やあんっ…!は、だめっ、ん…っ、あうぅ…、げんらく、さんっ…、やっ、やらぁっ…!」

先端とは違う、強く痺れるような甘い快感に、伊丹は思わず逃げるように腰を浮かせた。

もちろん幻洛は逃がすはずもなく、しっかりと伊丹の腰を抱き寄せながら甘い刺激を与え続けた。


「ひ、ぁっ、んぅ…っ」

「は…、可愛い…」

足先までビクビク震わせる伊丹に、幻洛は制御の効かない思考で熱く呟き、抱える伊丹をそっと組み敷いた。

「んぅ、っ…げんらくさん…」

散々焦らされ思考の蕩けた伊丹は、頬を赤く染め、目元に涙を溜め、息を荒げながら期待の眼差しで幻洛を見つめていた。


幻洛は理性を全て突き放し、目の前の愛おしい嫁に金眼をギラつかせながら舌舐めずりをした。

伊丹もまた、自らを組み敷く幻洛の圧倒的な雄感に思考が蕩け、与えられる快感を今か今かと待ちわびていた。


「…フッ、凄いことになっているな。」

「あ、っ…!んっ…」

幻洛は伊丹の下着を取り払い、ドロドロに蕩けた秘部に中指をグッと押し当てる。

既に幻洛の指さえ待てないソコは、キュンキュンと誘うように伸縮を繰り返していた。


「随分と濡らしたな…。」

幻洛は押し当てていた中指をゆっくりと埋め込むと、つぷ、と音を立てながらみるみる伊丹の蜜壺に飲み込まれていった。

「あっ、あ…、や、ん…っ」

伊丹は思わず甲高い声を上げながら腰を跳ね上げさせた。

幻洛の指一本すら離したくないと言わんばかりに、伊丹の内壁はキュウゥと吸い付きながら奥へ奥へと誘っていった。


「…ほら、伊丹、わかるだろ?」

「あっ!ん、ゃ…っ!」

幻洛は埋める指の本数を増やし、その中でヌチュヌチュと音を立てながら指先を蠢かせた。

寝室に響く卑猥な音と、幻洛の指先に弱い場所を嬲られ、伊丹はもう限界だった。


「あう、ぅ、…も、げんらくさん、はやくっ…、おっきいの、ほしい…っ」

伊丹は快感に溺れ、生理的な涙で目元を潤ませながら幻洛の背に手を回し、甘く誘うように腰にゆるゆると脚を絡ませた。

「ッ…」

懸命に求めてくる伊丹に、幻洛も最後の理性を手放した。


「ハッ、そう急かすな…、」

幻洛は上半身を起こすと、息を乱しながら自身の浴衣を全て脱ぎ捨てた。

併せて、窮屈そうに押し上げられた下着も取り払うと、ギチギチに腫れ上がった雄の塊がブルンと姿を現した。


その光景を、伊丹はうっとりとした視線で眺めていた。


筋肉質で逞しい身体。

その身体に刻まれた、戦士としての複数の傷跡。

ギラリとこちらを捕える黄金の瞳。

血管を浮かべ、ドクドクと脈打つ大きな雄。


もはや恥ずかしさ以上に本能的な快感に支配された思考は、幻洛以外のことを考えられないほど溶かされていた。


「…は、」

幻洛はゴクリと喉を鳴らし、ピト、と滾る先端を伊丹の雌にあてがうと、グッと本能のまま腰を押し進めていった。

「ひあ、あぁっ…!」

待ちわびていた熱く硬くドクドクと脈打つ雄の感覚に、伊丹は身体を震わせながら甲高く鳴いた。

たまらず、伊丹は幻洛の逞しい背に脚と腕を絡ませながら強く抱きついた。


「…、く」

幻洛は痛いほど肥大化した雄を全て埋め込むと、そのまま律動を進めた。

散々弄んだ伊丹の蜜壺は難なく幻洛の雄を飲み込み、熱く柔らかな内壁でやわやわと塊を締め上げた。

「あ、あっ、んっ…!げんらくさん、っ…!」

「…は、っ、伊丹…、ッ…」

伊丹は必死に幻洛にしがみつき、幻洛もまた、締め付けられる快感に腰の動きを早めていった。

激しい挿入を繰り返すソコは互いの体液を交えながら、バチュッ、ズチュッ、と卑猥な音を立てていた。


「あ、あう…、っん、はぁ、あ、きもちいよぉ…、げんらくさん…っ」

「ッ!」

甘えた声で訴えてくる伊丹に、幻洛は埋め込んだままの雄の質量がグンッと増すのを感じた。

伊丹もまた、一際増した中の存在に快感と嬉しさでビクンと身体を震わせた。

「んぁ、っあ、げんらくさん、すき、すき…ッ」

「は、ッ、伊丹…ッ」

蕩けきった伊丹に、幻洛は噛みつくように荒々しく唇を奪った。

幻洛は互いの歯がガチリと当たるも構わず伊丹の口腔を舌で乱し、繋がった下腹部のように卑猥な音を立てながら貪った。

「ん、ふぁっ…!」

伊丹は食べられるような雄々しく激しい口付けにたまらないほど幸福感を感じ、無意識に咥え込んだ幻洛の雄をキュンと甘く締め上げた。


長く荒々しい口付けを解くと、互いの唾液が銀色の糸のように口元を繋げていた。


「ん、あっ…!ぁっ、あうぅ…っ!」

「く、ッ…」

伊丹は幻洛の腰に脚を絡ませ懸命にしがみつき、理性を手放しながら快感に溺れていった。

そして幻洛も、そろそろ限界と言わんばかりに伊丹を抱え、ドチュ、ドチュ、と打ち付ける腰の動きを早めていった。

「あっ!あ、あっ…、ん!だめ、げんらく、さ…っ!も、イっちゃうぅ…っ!」

「…は、伊丹ッ…!」

そのままイかせてやると言わんばかりに、幻洛は一層力を込めてグッと腰を打ち付けた。

伊丹は身体の最奥から押し寄せる快感の波に、一層強く幻洛にしがみついた。


ドクッ、と互いのものが最奥で重く痙攣する。


「ひぁ、あ…!んやぁあっ…!」

伊丹は頭の中が真っ白になるほど強い快感にキュウゥゥッと幻洛の雄を強く締め上げ、足先までビクビクと痙攣させながら絶頂を迎えた。

「く…、はぁッ、…!」

幻洛は埋め込んだ雄の肉棒全てをグッと押し当て、強い締め付けと腰から訪れる絶頂の快感にドビュッ、どぷっ、と欲望を全て流し込んだ。


「あっ…あうぅ…っ」

幻洛の熱い欲望がドクドクと注がれる感覚に、伊丹はたまらずビクビクと腰を跳ね上げさせていた。

再び感じる"暗く重い何かが砕け散る感覚"に、その中は幻洛の雄に甘く優しく絡みついていた。

「…ッ、は…、」

幻洛は白濁とした大量の欲望を全て伊丹に流し込むと、名残惜しそうに軽く腰を揺すりながらズルズルと雄を引き抜いた。


長く甘い快感の波がようやく落ち着き、伊丹は幻洛に抱きついた。

「…っ、幻洛さん…だいすき…。」

「ん…、俺も、伊丹が大好きだ…愛している…。」

幻洛も隣に寝転ぶと、甘えるように抱きついてくる伊丹の唇に優しく口付けた。

ちゅ、と音を立てて解放すると、伊丹は夢見心地のようにうっとりと見つめながら、少し恥ずかしそうに幻洛の元へ顔を埋めた。

その尻尾は、隠しきれない感情を露わにするようにゆらゆらと揺れていた。


ああ、俺の嫁はどこまで可愛いのか。

幻洛はそう思いながら、綻ぶ口元をそのままに、再び湧き上がる熱を必死に堪えていた。


今日起こった忌々しい出来事が無かったかのように、心は幸せに満ちていた。

それはまさに伊丹の解放された呪いと同じように、幻洛もまた伊丹という存在に、心も、過去も、自身の存在も、全てを救われていた。


この幸せに満ちた時間を全身で感じながら、幻洛は伊丹と甘い夜を過ごしていった。


………


翌朝、まだ陽が昇る前の時刻。

昨晩の甘い一時を交えた幻洛と伊丹は、同じ布団の中で微睡んでいた。

「…おはよう、伊丹。」

「ん…幻洛さん…、おはようございます…。もう朝、ですか…。」

伊丹はかすれた声で呟きながら重い瞼に抗っていた。


「んん…、幻洛さん…あったかい…。」

夢現の伊丹は、もそもそと身じろぎながら幻洛の温もりを感じていた。


伊丹の身体には、呪いの痣以上に幻洛の痕が付けられていた。

そして情事の後、幻洛が予め用意した湯と手拭いにより身体を綺麗に拭われ、身なりはしっかりと整えられていた。


幻洛はすり寄る伊丹に腕を回した。

「ああ、俺の嫁は朝から可愛いなあ…、たまらん…。」

別の意味で起きそうな幻洛は、腕の中に閉じ込めた愛おしい者を幸せそうに眺めていた。


幻洛は徐に、伊丹の柳緑色の長髪を手ですくい上げ、その香りを楽しんだ。

自分の紺桔梗色の髪とは違い、サラサラとした絹のようなその髪は、流れるように指の間から落ちていった。


「ん…幻洛、さん…」

「!」

伊丹は寝惚け眼のまま、幻洛の唇へ触れるだけの優しい口付けを落とした。

思わぬ行動に、幻洛は脳裏がざわついた。

「…おい、…ん?」

突然、幻洛は伊丹に頭を優しく撫でられ動きを止めた。

「…ん、もうちょっと…、寝かせて…く…だ………。」

伊丹は再び、すうすうと寝息を立てながら夢の中へ落ちていった。


愛弟子のふゆはの前では考えられないほど無防備な伊丹の姿に、幻洛は静かにフッと笑った。

こんな無防備な伊丹を知っているのは、自分だけなのだ。

そう思うと、幻洛は優越感で心がいっぱいになった。


伊丹の心地良い温もりを感じながら、幻洛も再び瞼を閉じた。


腕の中で眠る愛おしい者と同じ夢を見られますように、と願いながら。

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